飲酒について:2023年12月

お酒との上手な付き合い方 〜心身の健康を守る「適量」と休肝日〜

歓送迎会や年末年始など、季節の節目にはお酒を飲む機会が増えるものです。適度なお酒はコミュニケーションを円滑にし、リラックス効果をもたらしますが、飲み方を間違えると心身に深刻なダメージを与えてしまいます。

今回は産業医の視点から、アルコールが体に与える影響、精神面(メンタルヘルス)との深い関わり、そして健康を維持するための正しい飲み方について詳細に解説します。

目次

1.知っておきたい「適度な飲酒量」の基準

厚生労働省が推奨する「節度ある適度な飲酒」の基準は、1日平均で「純アルコール約20g程度」とされています。

お酒の種類純アルコール20gの目安
ビール(アルコール度数5%)500ml(中ジョッキ1杯、またはロング缶1本)
日本酒(アルコール度数15%)180ml(1合)
チューハイ(アルコール度数7%)350ml(レギュラー缶1本程度)
ワイン(アルコール度数12%)200ml(グラス約2杯)
ウイスキー(アルコール度数40%)60ml(ダブル1杯)

女性や高齢者、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる体質の方は、アルコールの分解能力が比較的低いため、この半分の量が適量とされています。

2.過度な飲酒が引き起こす身体への悪影響

アルコールは主に肝臓で分解されますが、その処理能力を超えた量が体内に入ると、全身の臓器に多大な負担をかけます。

1.肝臓へのダメージ

処理しきれなかったアルコールは中性脂肪として肝臓に蓄積し「脂肪肝」となります。自覚症状がないまま進行し、放置すると「アルコール性肝炎」、そして元の健康な状態には戻らない「肝硬変」へと悪化します。

2.高血圧と脳血管疾患

慢性的な多量の飲酒は血圧を確実に上昇させます。血管に強い圧力がかかり続けることで動脈硬化が進行し、脳出血や脳梗塞といった命に関わる疾患の発症リスクを跳ね上げます。

3.がんリスクの上昇

口腔、食道、大腸、肝臓、乳房など、様々な部位のがんリスクが、毎日の飲酒量に比例して高まることが科学的に証明されています。

3.精神科・産業医が警告する「お酒とメンタルの罠」

アルコールは脳の働きを麻痺させる性質を持っています。一時的な気晴らしにはなりますが、長期的にはメンタルヘルスを悪化させる大きな要因となります。

1.「寝酒」は睡眠の質を破壊する

「眠れないから」とお酒を飲むと、寝付きは良くなるように錯覚します。しかし、アルコールが体内で分解される過程で交感神経が刺激されるため、深い睡眠が妨げられ、夜中に何度も目が覚めてしまいます。結果として睡眠の質が著しく低下し、翌日の強い疲労感や気分の落ち込みを引き起こします。

2.ストレス飲酒の悪循環と依存症

仕事のプレッシャーや不安を「お酒で紛らわす」習慣がつくと、次第に脳が耐性を持ち、同じ量では酔えなくなっていきます。飲酒量が徐々に増え、エスカレートすると自分ではお酒の量をコントロールできなくなる「アルコール依存症」という深刻な状態に陥る危険性があります。

4.健康を守る「お酒の5ルール」

お酒を安全に楽しむために、以下のルールを日常の習慣に取り入れましょう。

1.「休肝日」を週に2日以上設ける

疲労した肝臓を修復させるために、お酒を全く飲まない日を週に2日以上作りましょう。数日連続して休ませるのが理想的です。

2.食事と一緒にゆっくり飲む

空腹のままお酒を飲むと、胃腸の粘膜が荒れ、アルコールの吸収が急激に進んで悪酔いしやすくなります。アルコールの分解を助けるタンパク質やビタミンを含む食事(枝豆、豆腐、肉、魚など)と一緒に楽しみましょう。

3.強いお酒は薄めて飲む

ウイスキーや焼酎などは、水割りや炭酸割りにして胃への負担を和らげ、血中アルコール濃度の急激な上昇を防ぎます。

4.お酒と同量の「和らぎ水(チェイサー)」を飲む

アルコールには強い利尿作用があり、飲んだ以上に水分が尿として排出されて脱水状態に陥りやすくなります。お酒の合間にこまめに水を飲むことで、脱水と悪酔いを防ぐことができます。

5.自分の適量を超えない・人に強要しない

アルコールの分解能力は人それぞれ全く異なります。自分のペースと適量を守り、体調が優れない時はきっぱりと断る勇気を持ちましょう。

最後に:日々の振り返りを大切に

「酒は百薬の長」とも言われますが、それは適量を守り、休肝日を設けてこそ成り立つ言葉です。健康診断の肝機能の数値(γ-GTPなど)をひとつのバロメーターとし、ご自身の心と体をいたわりながら、上手にお酒と付き合っていきましょう。

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