パワーハラスメントとパワハラ防止対策関連法について:2022年8月

職場の心を壊す「パワーハラスメント」 〜影響と防止対策〜

近年、精神障害の労災原因としてハラスメントが増加しています。

パワーハラスメント(パワハラ)は、個人の尊厳を傷つけるだけでなく、うつ病や適応障害といった深刻なメンタルヘルス不調を引き起こす重大な要因です。

令和2年6月1日にはパワハラ防止措置等の実施義務が施行され、企業には厳格な対応が求められるようになりました。今回は産業医の視点から、パワハラの正しい定義とその影響、そして職場を守るための具体的な防止対策について詳細に解説します。

目次

1.パワーハラスメントの「3つの要件」と「6つの類型」

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものを指します。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であること。
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること。
  3. 労働者の就業環境が害されること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)。

具体的には、以下の6つの類型に分類されます。ご自身の職場環境に当てはまるものがないか、確認してみてください。

パワハラの類型具体的な行為の例
身体的な攻撃叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける、丸めたポスターで頭を叩くなど。
精神的な攻撃同僚の目の前で叱責される、他の職員を宛先に含めてメールで罵倒される、必要以上に長時間にわたり繰り返し執拗に叱るなど。
人間関係からの切り離し1人だけ別室に席をうつされる、強制的に自宅待機を命じられる、送別会に出席させないなど。
過大な要求新人で仕事のやり方もわからないのに他の人の仕事まで押しつけられるなど。
過小な要求運転手なのに営業所の草むしりだけを命じられる、事務職なのに倉庫業務だけを命じられるなど。
個の侵害交際相手について執拗に問われる、妻に対する悪口を言われるなど。

2.企業と従業員に与える深刻なダメージ

パワハラは、被害者、加害者、企業の全てに損失となります。

厚生労働省の実態調査によると、パワハラが企業に与える影響として、以下のような深刻なデータが示されています。

  1. 職場の雰囲気が悪くなる(97.1%)。
  2. 従業員の心の健康を害する(95.5%)。
  3. 従業員が十分に能力を発揮できなくなる(85.3%)。
  4. 職場の生産性が低下する(74.0%)。
  5. 人材が流出してしまう(69.3%)。

また、企業は法的な責任も問われます。過去の裁判事例では、内部告発を契機とした職場いじめ(転勤や昇格停止、個室への配席等)に対し、裁量権の逸脱として不法行為および債務不履行に基づく損害賠償責任が会社側に認められています。

3.法律で義務化された「事業主の4つの義務」

労働施策総合推進法(パワハラ防止対策関連法)において、事業主には以下の4つの義務が制定されています。

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発。
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備。
  3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応。
  4. 相談者・行為者等のプライバシーを保護すること、その旨を労働者に対して周知すること、パワハラの相談を理由とする不利益取扱いの禁止。

4.職場を守るための「7つの具体策」

企業は具体的にどのような行動を起こせばよいのでしょうか。以下の7つのステップを計画的に実行することが求められます。

  1. 組織トップの決意と表明
    パワーハラスメントは、企業のトップから全従業員が取り組む重要な会社の課題であることを明確に発信しましょう。
  2. 社内アンケートの実施
    より正確な実態把握や回収率向上のために、匿名での実施が効果的です。対象者が偏らないように注意しましょう。
  3. 相談窓口の設置
    従業員が相談できるように窓口を設置し、相談者の秘密が守られることや不利益な取り扱いを受けないことを明確にしておきましょう。
  4. 社内研修の実施
    全員が受講し、かつ定期的に実施することが重要です。管理監督者と一般従業員に分けた階層別研修の実施が効果的です。
  5. 就業規則の改定、労使協定の締結
    罰則規定の適用条件や処分内容、相談者の不利益な取扱いの禁止などを就業規則等に明確に定めます。
  6. 社内での周知・啓蒙
    組織の方針、ルールや相談窓口などについて、計画的かつ継続した周知を実施していきます。
  7. 再発防止のための取組
    再発防止策は予防策と表裏一体です。取組内容の定期的検証・見直しを行うことで、より効果的な対策の策定に取り組みましょう。

最後に:風通しの良い職場が最大の予防策

パワーハラスメントの背景には、コミュニケーション不足や業務の過度なストレスが隠れていることが少なくありません。

制度やルールを整えるだけでなく、日頃から互いを尊重し、些細なことでも相談しやすい「心理的安全性」の高い職場環境を築くことが、従業員のメンタルヘルスを守る最大の予防策となります。

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