セルフケア:2023年4月

心のSOSを見逃さない「セルフケア」の基本 〜ストレスの正体を知り、自分を守る〜

現代の職場環境において、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は半数以上(54.2%)に上ると言われています(厚生労働省調査)。

また、精神障害による労災認定の請求も年々増加しており、メンタルヘルス不調は決して「一部の人だけの問題」ではありません。 厚生労働省が推奨する職場のメンタルヘルスケアには「4つのケア」が存在しますが、その中でもすべての土台となり、最初の一歩となるのが「セルフケア(自分自身のケア)」です。

今回は産業医・精神科の視点から、ストレスのメカニズムと、自分自身の心身を守るための具体的な予防アクションについて詳細に解説します。

目次

1.ストレスの正体を科学的に「知る」

私たちが日常的に使う「ストレス」という言葉ですが、医学的・心理学的には大きく3つの要素に分けて考えます。これはよく「ゴムボール」に例えられます。

  1. ストレス要因(ストレッサー):ボールを外側からギュッと押さえつける力のことです。 職場においては、仕事の量や質、対人関係、役割の不明瞭さ、仕事のコントロール度の低さなどがこれに該当します(NIOSHの職業性ストレスモデルに基づく分類)。
  2. ストレス耐性:押さえつけられたボールが、元の丸い形に戻ろうとする反発力(弾力性)のことです。 個人の経験や思考の癖、その時の睡眠状態などによって強さが異なります。
  3. ストレス反応:押さえつけられてボールがゆがんでしまった状態のことです。 ストレス耐性を超える強い力がかかり続けると、心身に様々な不調が現れます。

2.見逃してはいけない3つの「ストレス反応」

限界を超えたストレスは、主に「心理面」「生理(身体)面」「行動面」の3つの領域に反応として現れます。 ここ1ヶ月を振り返って、以下の状態に当てはまらないか確認してみましょう。

反応の分類具体的な状態のサイン産業医からの解説
心理的反応気が張り詰めている、不安だ、落ち着かない、ゆううつだ、何をするのも面倒だ、気分が晴れない脳のエネルギーが枯渇し、感情のコントロールが難しくなっている状態です。 うつ病の初期症状と重なるため注意が必要です。
生理的(身体的)反応ひどく疲れた、へとへとだ、だるい、お腹が痛い自律神経の乱れから、胃腸の不調や慢性的な疲労感として体に直接SOSが現れます。内科を受診しても異常が見つからないことが多いのが特徴です。
行動の反応(行動化)お酒やタバコの量が急激に増えた、遅刻や欠勤が増えた、ミスが多くなったストレスを紛らわすため、あるいは集中力の低下によって、目に見える行動に変化が現れます。 周囲の人が最も気づきやすいサインでもあります。

3.メンタルヘルス不調を予防する「3つのステップ」

心の健康を守るためには、自分自身で状態を管理する「セルフケア」が不可欠です。以下の3つのステップを日常の習慣に取り入れましょう。

  1. 自分の状態に「気づく」
    忙しい日々を送っていると、自分の疲労やストレスに無自覚になりがちです。「最近よく眠れていない」「イライラしやすい」といった、自分自身の小さな変化を客観的に見る(観察する)習慣を持ちましょう。
  2. ストレスの仕組みを「知る」
    前述したように、メンタルヘルス不調について理解を深め、ストレスが心身にどのような影響を与えるのかを正しく理解しておくことが重要です。 正しい知識があれば、「今のこの胃痛やだるさは、あの仕事のプレッシャーが原因かもしれない」と冷静に分析できるようになります。
  3. 限界の前に「相談する」
    セルフケアとは「すべてを自分一人で抱え込んで解決すること」ではありません。最も重要なセルフケアは、気軽に話せる人を持つこと、そして職場の内外の相談窓口を知っておくことです。 限界を迎える前に、あらかじめSOSを出せる場所を確保しておきましょう。

最後に:セルフケアは「働くための基礎体力」

身体の健康を維持するために運動や食事に気を遣うのと同じように、心の健康を維持する「セルフケア」は、長く健やかに働き続けるための必須スキルです。

「少し疲れたな」「なんだかゆううつだ」と感じたら、それは心からの重要なアラートです。そのサインを無視して無理を重ねるのではなく、自分自身を客観視し、適切にいたわる時間を意図的に作り出していきましょう。

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